「言わなくていいから、ね」


お願いと目で訴えると、西崎はため息をつきながらも了承してくれた。


「お人好しも大概にしないとあとでつらくなるぞ」


「そうかもしれないけど大丈夫。覚悟の上ですから」


にこっと笑ってみせると、西崎は苦笑して私の頭をポンポンと撫でた。


「……お前のそういうとこ嫌いじゃねーよ」


「ん?何か言った?」


「何でもねーよ」


西崎の顔をのぞきこみながら聞き返したけど、西崎はまた頬をピンク色に染めてそっぽを向いてしまった。


「あ、いた!おーい西崎ー!」


すると、後ろからバタバタと男子生徒が数人、西崎のもとに駆け寄ってきた。


「何だよ、どうした」


「ちょっといろいろあって部活中だってのに1年生の奴らが喧嘩始めちゃって……お前も来てくれ」


「はー?何だよそれー!」


よくわからないけど、話の内容的に彼らは西崎と同じサッカー部の人たちらしい。


「悪い、かえで!俺、やっぱ部活行ってくるわ!」


「うん。じゃあ、また明日ね」


手を振ってバイバイすると、西崎も手を振り返してサッカー部の人たちと走って行った。