「梨花先輩の……彼氏?」


私がつぶやくと、西崎も「だろうな」と頷く。


手を繋いで、同じ歩幅で歩いて、時折楽しそうにじゃれあいながら校門のほうへと歩いて行く梨花先輩と彼氏と思われる男子。


「柊先輩って、このこと知ってんのか?」


「わかんない……。でも……」


梨花先輩が好きだと言った時の柊先輩の顔が脳裏に浮かぶ。
梨花先輩のことを本当に大切に想っているんだって痛いぐらいに伝わってくるような、すごく優しい表情を浮かべていたのを、私はしっかり覚えてる。


あんなにも梨花先輩のことが好きなんだから、きっと彼氏がいることなんて知らないと思う。


「西崎っ、このこと絶対柊先輩には言っちゃダメだからね」


「いいけど……何で?梨花先輩に彼氏がいるってわかったら、柊先輩も諦めてお前のこと好きになるかもしれないじゃん」


私も考えたよ、そういうずるいこと。
だけど、柊先輩の悲しむ顔やつらそうな顔を見たくない。先輩のそんな姿を想像するだけで、心が痛くなる。


それに、梨花先輩の代わりみたいな感じで私を好きになってもらっても、あんまり嬉しくないと思うから。