菜々はバイトがあるということなので先に帰ってもらい、今日は西崎とふたりで体育館へと向かう。
「でも、西崎もバスケに興味あるとは知らなかったなぁ。サッカーつまんないの?」
「はあ?ちげーよ!バスケなんかよりサッカーがいいに決まってんだろ!」
「そうなの?じゃあ何で?」
隣を歩く西崎を見上げながら聞いてみると、西崎は急に顔を真っ赤にして押し黙る。
「西崎?」
「うるせーな!とっとと行くぞ!」
西崎は歩く速度を早めてずんずんと先を行ってしまう。
変なの……。
待ってよ、と走って追いかけようとすると、西崎が突然立ち止まった。
それに気付いたものの急には止まれず、西崎の背中にぶつかってしまう。
「痛っ!ちょっ……急に止まんないでよ……」
「かえで。外見てみろ」
「え?」
ぶつけた鼻をさすりながら、西崎に促されるまま窓の外に視線を移す。
西崎が指さす方を見てみれば、そこにいたのは梨花先輩と……男子生徒。
柊先輩じゃない。
たぶん梨花先輩や柊先輩と同い年と思われる男子生徒と、手を繋いで歩いていた。
「梨花先輩と一緒にいる奴って誰?あれが“柊先輩”?」
柊先輩と会ったことがない西崎は、少し聞きずらそうにしてるけど、違うよ。私も全然知らない人。