「柊先輩は、いつもこの廊下を通って体育館に行ってるんだ。だから今日も絶対……!」


「かえで、あんた本格的なストーカーみたいに詳しいね」


廊下の曲がり角で柊先輩を待つ私に、菜々がさらりと失礼なことを口にする。
先輩がいつやって来るかドキドキで、私はそれどころじゃなくて気にしてない。


……先輩、受け取ってくれるかなぁ。


カサッと、私の両手に握られているクッキーが音を立てる。


授業の課題でもあったけど、先輩のために一生懸命心を込めて、感謝の気持ちを目一杯込めて作った。


まずは元気良く先輩の名前を呼んで、あの時は助けてくれてありがとうございましたって言って。それからクッキーを渡して……。


えーと、それで?それで……走り去る?


いや、おかしいだろそれは。


と、とりあえず深呼吸を……。


「今更何緊張してんの。かえで、すでに先輩に告白までしてるじゃない。しかも2回も」


「そ、それはそうなんだけどっ!」


向こうは私の気持ちを知ってるけど、だからこそ会えば恥ずかしくなると思うし。2回目の告白だってほとんど勢いに任せて言っただけだし。というか、先輩お菓子とか嫌いだったら元も子もないし!



「あ、ほら来たよ!かえで!」


「……!」


数十メートル先からこっちに向かって歩いてくる、柊先輩の姿が見えた。