「それ、ダメだろ。つか、まず告る前にそっちが先だろうよ」
「ご、ごもっともでございます……」
悔しいけど西崎の言う通りだ。
気持ちばかり先走って、順番が逆になってしまった。
「それはそうと、ロードレースの時に好きになったってことは、かえでは先輩を好きになってからまだそんな経ってないんだな?じゃあ、俺にもまだ望みは……」
「ねぇねぇ、かえでー!」
「ん?」
西崎が何やらブツブツとつぶやいていたけど、菜々の元気な声で何を言ってるか最後のほうは聞き取れなかった。
まあ、そんなたいしたことではないだろうから別にいいんだけど、西崎が何故か菜々を睨んでる。大丈夫かな?
「かえで。だったらさ、今日これから先輩にお礼しに行かない?」
「え?今日?何で?」
お礼をするのは当然のことだからいいんだけど、どうして今日?
「今日の5、6時間目は、家庭科でしょ?確か自分の好きなものを作る課題だったと思うから、先輩にお菓子作ってあげてみたら?」
先輩に……お菓子……。
何それ、超女子力高そうじゃん!
「菜々ちゃん、さすがです!最高!」
ありがとう、と菜々の両手を握り締める。
「美味しくできたらいいね」と微笑んでくれる菜々とは対照的に、後ろにいる西崎は口を尖らせたまま教室を出ていってしまった。