私だって、先輩を好きになったのは、ほんの些細な出来事がきっかけだったんだから……。
「いつか……」
「え?」
キッと、少し睨むぐらいの強い目で、ぽかんとしている先輩を見据えた。
「いつか、いいえ、先輩が卒業する前かそれよりももっと早く、あなたを振り向かせてみせます!」
梨花先輩と一緒にいる時の内村先輩を見て、正直一度は挫けてしまった。ああ、勝てっこないって。
でも、ふたりはまだ付き合ってるわけじゃない。それに、見てる感じだと梨花先輩は内村先輩の気持ちには気づいてなさそうだった。
つまり、先輩はまだ梨花先輩に告白してない。
だったら、告白してしまう前に、先輩に私のことをもっといっぱい知ってもらえれば、私のほうも少しは見てくれるようになるかもしれない。
「いつか振り向かせてみせますので、覚悟しててくださいね、柊(しゅう)先輩!」
先輩と仲良くなろうとしているわけだから、まずは名前で呼ぶことから始めよう。
三島かえで、燃えてきましたー!!
呆気に取られている先輩に、私は「では、また明日」と告げて、失恋した時よりも数倍爽やかな気持ちで菜々のもとへと駆け出した……。