「かえでちゃん?今なんて……?」


「嫌ですって言ったんですよ」


表情ひとつ変えることなく、まっすぐに先輩を見て答える私に、先輩は面食らったように頭を抱える。


「先輩と梨花先輩は、もう付き合ってるとかではないんですよね?だったら、私にもまだ望みはあるはずです!」


「そうかもしれないけど……たぶん俺はずっと梨花のことが好きだと思う。かえでちゃんがどんなに俺を好きでいてくれたとしても、俺の気持ちは変わらない」


“こんなこと自分を好いてくれてる子にハッキリと伝えるのは酷だ”
そう思っているかのように、先輩の顔が苦しそうに歪んでる。


「梨花先輩のこと……大好きなんですね」


「……うん。ずっと前から想い続けてるよ」


チクリと刺さるような痛みを覚えた。


そんなふうに、私も先輩に強く想われたいよ。
だから……そんな簡単に諦めるわけにはいかない。


「内村先輩。昨日、好きな人がいるってこと以外に、私のことをよく知らないから、とも言ってましたよね」


「あ……まあ……」


確かに、同じ部活に入ってたりしなければ、高校での先輩と後輩なんて、ほとんど関わることのない相手だ。お互いをよく知らないのだって当たり前。