体育館から少しだけ離れた、グラウンド用の備品が揃ってる体育倉庫の前。


そこまで来て、私はやっと自分の右手の違和感に気づく。


「あっ!すみません!ずっと……手……」


勢いで掴んだ先輩の左手を、ずっと握っていたままだった。


慌てて離したけど、先輩の温もりがまだ右手に残っていて、今更ドキドキしてしまう。
勢いって怖いなぁ。ドサクサに紛れて先輩と手繋げちゃったんだもん。


って、今はそんなこと置いといて。


周りに人がいないことを確認してから、私は単刀直入に切り出した。


「梨花先輩ですよね?先輩の好きな人って」


「えっ……」


一瞬びっくりして目を丸くしたあと、先輩の頬がみるみるうちに赤くなっていく。
そのあと、言いにくそうに視線をさまよわせていた先輩だったけど、私が真剣に答えを待っているのがわかったのか、観念したように頷いた。



「……うん、そうだよ」



やっぱり……。あの笑顔は、好きな人相手じゃないとできないもん。


「かえでちゃんだっけ?だから、俺のことはもう諦めたほうが……」


「嫌です」


「うん……ええっ!?」


俯いていた先輩が、私の答えに驚いたのか勢いよく顔を上げた。