小さな声だったと思う。

今、強い風が吹いたら、そよぎ擦れ合う葉の音に紛れてしまいそうな声。

だから、聞き間違えかと思った。


だって、先輩は屋上が好きだったはず。

まだ太陽の熱が柔らかかった頃、水樹先輩を探しに屋上に行けば、ほぼそこでお昼寝してる先輩を見つけられるほどに。


それなら、別の何かを指してるの?

わからなくて、尋ねようと口を開いたけれど。


「少し早いけど、戻ろうか」


まるで、この話はお終いだと言うように、水樹先輩は立ち上がった。


また、聞けなかった。

昨日もそうだったし……


水樹先輩、何かあったのかな?


疑問に思いながらも先輩の半歩後ろをついて歩いていると。