そもそも、知っている"今日"が繰り返されてるわけじゃないらしい。
ジュースを零すことは同じだったけど、仕事を追加はされていないし、プール清掃だってしたことがないのだ。
知っているようで、知らない夏。
奇妙な現状に戸惑いは隠せないけれど……
今は、水樹先輩のことだ。
呆れたかな?
嫌われたりしないかな?
申し訳なさと不安で心が押しつぶされそうになり、無意識に胸元のあたりで拳を握ると。
──ポンポン。
先輩の手のひらが、私の頭を優しく叩いた。
「本当に気にしないでいいから」
「でも……」
「俺は、真奈ちゃんと過ごす時間が増えて嬉しかったよ」
まさか、こんなに甘く嬉しい言葉をもらえるとは思わず。
「や、優しすぎですよ先輩」
赤くなってるであろう顔を隠すように俯くと、水樹先輩が小さく笑う声が聞こえた。