おかしいな。

おじいちゃん、しゃもじ持ってたけど。

テーブルの上のご飯もまだそろってなくて、たくあんとほうれん草のお浸しのみだった。

ほのかに香ってくるのは焼き鮭の匂い。

もしかして、寝坊したんだろうか?

おじいちゃんにしては珍しいけど、たまにはそんな日もあるだろうし。

考えながら顔を洗い、タオルを手にしたところでハッとなった。


「お、おじいちゃん! 具合悪いなら寝てていいよっ」


寝坊するくらいだ。

風邪でもひいて調子が悪いんだろうという結論に至り、私は慌てて網の上の鮭をひっくり返すおじいちゃんに駆け寄った。


伴侶であるおばあちゃんを早くに亡くし、男手ひとつで私のお父さんを育ててきたおじいちゃん。

私が3才の時に私のお母さんが病死してから、ロマンを求め世界を放浪しているお父さんの変わりに、私を厳しくも可愛がり育ててくれている。

怒ると怖いけど、不器用ながらも優しいおじいちゃんが私は大好きだ。

ということで、おじいちゃんに無理はさせられない!