「でも、その直後、俺の返事に安心した君がフェンスに寄りかかって事故に遭った」
声色に悲しみを乗せて。
「助ける間もなくて、俺は動かない君を狂いそうになりながら見下ろしてた」
瞳に痛みを滲ませて。
「そこからの記憶は曖昧で、気付いたら……」
「戻ったんですね」
私の声に頷く水樹先輩。
「前にも言ったけど、最初は夢だと思ってた。でも、君を失う度に記憶は鮮明に残るようになった」
そこからは、水樹先輩は私を助けることに必死になったと話してくれた。
「みんながいて君がいる居心地のいい夏の先を、君が生きている夏の先をずっと望んでたんだよ」
そう言いながら、水樹は優しく瞳を細め私を見つめた。
「きっと、先輩は諦めてなかったんですよ」
「諦めてたよ」
前にも言っただろと苦笑いする水樹先輩に、私は頭を振る。