「ごご、ごめんなさいっ」
恥ずかしさで急激に顔が火照り、急いで手を離そうとしたら。
「ダメ」
水樹先輩に強く握られ離せなくなる。
「や、でも……」
みんな見てるんですけどと抗議したかったけど、それは憚られた。
だって、水樹先輩が甘えるように「もう少しだけ、このままでいて」なんて言うから。
「す……少しだけですよ?」
答えると、水樹先輩は目を細めて喜んでくれる。
会長が「終わったー。俺の初恋がー」とかなんとか言って、むせび泣き始める中……
「ね、真奈ちゃん」
私を呼ぶ、水樹先輩の穏やかな声。
何ですかと返事をすると──
「やっと、君のいる夏になった」
君がいた夏をようやく越えられた。
柔らかな夕日の光に照らされて。
水樹先輩は私を愛おしむように見つめながら微笑んだ。