全ての光景がスローモーションのように見えた。

水樹先輩が驚愕する様も、彼の手から自分の手が離れようとしているのも。


私はまた、水樹先輩を悲しませてしまう。

彼に信じてと言ったのに。

それを違えて、私は裏切ろうとしている。


先輩の苦しみを。


今日までの日々を。


無駄にしたくないよ。


心から強く願った刹那──



離れようとしていた腕が、ガシリ、と。


「……ぁ……」


再び、強い力で繋ぎとめられた。