「は、離してくださいっ。先輩まで落ちちゃう!」
「落ちたことなんて何度もある。助けたくて、君と一緒に落ちたことも。諦めて、君と一緒に落ちたことも」
水樹先輩が吐露したのは、絶望の果ての選択。
悲しい告白に、私の胸が締め付けられた。
「そして、俺だけがまた夏を繰り返すんだ」
「で、でもっ、また繰り返したら先輩は!」
隠されてしまうかもしれない。
「決めたんだ。これで最後になるなら、精一杯あがいてみせるって。だから、諦めない」
強い意志を持って、先輩は宣言した。
水樹先輩が前を向いてくれたことが、再び未来を見ようとしてくれていることが嬉しい。
だけど──
限界は、すぐに訪れて。
水樹先輩の手から、ずるり、と。
私の腕が
滑った。