記憶を手繰り寄せながら、足を前に前にと進めた時、最悪なケースが頭を過ぎった。


「……もう、いなくなってしまったの?」


……違う。

そんなはずない。

水樹先輩は言ってた。

信じようと思うと。

覚悟も少しは出来てきてると。

だから、こんな風にいなくなるはずはない。

私は水樹先輩を信じる。


じゃあ……どこに?


校内のどこかにいるのか。

そう思って、フェンス越しに校庭の様子を見る。

けれど、そこには人の気配はなく、今度は反対側のフェンスへと移動した。

ここの下はペチュニアの花壇が連なる裏庭がある。

木の陰になっている所にもいないかと、フェンスに体重を預けた瞬間。


──ガタン。


「……え?」


金属の音に、突如感じるデジャヴ。

けれど、その事に思考を廻らす間もなく、手を添えているフェンスが前へ倒れて。


私は寄り添うようにバランスを崩しながら、思い出していた。