「……はい。みんな水樹先輩のことを忘れてて、どんどん水樹先輩の存在がなくなっていって……」


思い出し、語るだけでも泣きそうになる光景。

訪れて欲しくない未来であり、過去の話をしているのに。


「でも、真奈ちゃんは覚えていてくれた。そけだけで十分だよ」


水樹先輩は、嬉しそうに微笑んだ。


言葉が届かない。

未来を諦めた水樹先輩には、私がどんなに言葉を重ねても無駄なの?


……ダメだ。

ここで挫けたら、本当に終わってしまう。


私は大きく首を横に振った。


「先輩が諦めても、私が諦めません」

「……真奈ちゃん、それでも俺はもう──」

「同じでしたか?」

「──え?」

「私が戻ったこの夏は、水樹先輩が過ごしてきたたくさんの夏と同じ?」


問いかけると、水樹先輩は言葉を詰まらせてから頭を振る。