けれど、ディスプレイに浮かんでいる名前は待ち人のものではなく……


『あ、真奈ちゃん!』


会長だった。

その声はどこか焦っているように聞こえて、私はスマホを耳に当てながら眉を少し寄せる。


「どうかしました?」

『いるよ!』

「え?」


何を指しているのか、一瞬理解できなくて瞬きをした。

だけど、ふと、頭にその人のことが過ぎると同時。


『水樹がいる。声をかけて逃げられると真奈ちゃんが話すチャンスがなくなると思ったから、とりあえず隠れて電話したけど』

「どこですかっ?」

『黄水(きすい)神社。多分、境内の方に上がっていったと思う』


そこは、生徒会のみんなで行った夏祭りが開催された神社だ。


『来れる? 来れないなら、俺が──』

「いえ、すぐ行きます。教えてくれてありがとうございます!」