屋上は、先輩のお気に入りの場所だ。

この時期は太陽からの容赦ない熱で溶けるからとあまり足を運んではいないようだったけど……


ふと、風が私の体を撫でるように通り過ぎて、いつもはしっかりと閉まっている扉が僅かに開いている事に気が付く。

私はドアノブに手をかけて、屋上に出てみる。


「……水樹先輩?」


声をかけてみるけれど、先輩からの返事はない。

それどころか、屋上には先輩の姿はなかった。

私以外は誰もいない。


でも、そんなのはありえない。

階段を上がっていく水樹先輩を確かに見たんだ。

そして、その先はこの屋上しかない。

だけど先輩の姿はないなんて……


と、そこまで考えて、嫌な可能性を脳内に浮かべてしまう。


まさか、落ちてしまった……とか?