「会長はおでかけですか?」


もしかしたら、もう少し空が藍色に近ければバレなかったかもしれない。

けれど、陽が暮れる前の明るさでは──


「……どうしたの?」


会長の目は、誤魔化せなかった。


「嫌なことでもあった?」


心配そうに私の顔を覗き込む会長。


……ダメ。

やめてください。

今優しくされたら……


「……っ……なんで……」


涙が止まらなくなる。


「ここにいるんですかぁ」


悲しみを、抑えられなくなる。


「会長のバカァ!」


どこにも行けなくなった水樹先輩への想いが。


「水樹先輩のっ……バカァ!」


溢れ出してしまう。