走り去る車を、私たちはやりきれない気持ちで見送って……
三重野先輩が、弱々しい声で「学園に戻りましょう」と促す。
その声に会長が頷いて。
「行こう」
そう言って歩き出したのだけど。
私は、水樹先輩だけ動かないのに気付いて。
「水樹先輩……」
車が去っていた方角を見つめたままの水樹先輩にそっと声をかけた。
みんなも気付き、足を止めて振り返る。
すると……
「やっぱり、ダメなんだ」
水樹先輩が、沈んだ声で呟いた。
何がダメなのか。
私たちは言葉の意味を探して水樹先輩を見ていた。
会長も僅かに首を傾げて。
「水樹?」
名前を呼んだけど、聞こえていないのか、水樹先輩は独り言のように唇を動かす。