いくらなんでもそう遠くには行っていないだろう。

そんな会長の見立てで、私たちは学園の周りを手分けして探していた。


自転車通学の赤名君にはもしかしたらという可能性も考慮し、少しだけ遠い場所も見てもらっている。


私の担当は公園付近。

遊具の隙間、草むらの中、公衆トイレ。

道路脇の溝まで探して回ったけど、見つからない。


「どこ行っちゃったんだろう……」


1人呟いたところで、スマホが着信を知らせた。

相手は会長からで、私は軽快に鳴るメロディーを止める。


『真奈ちゃん。今すぐホタル川の玻璃(ハリ)橋のとこに来て』


私が声を出す前にまくし立てるように話す会長。


「ホタル川? いたんですか?」

『うん。けど……連絡をくれた赤名の動揺からして、よくない事になってるかもしれない』


機械越しに聞こえる会長の声は真剣なもので。