夕暮れに染まる校舎の中を、私は足早に歩いていた。
始業式の日は部活もなく、その為に私以外の生徒の気配はない。
やがてたどり着いた目的地は、水樹先輩が在籍しているはずの3年2組の教室だ。
扉は閉まっている。
私はそっと扉の上部についている窓から中の様子を伺った。
生徒の姿はない。
けれど、上級生の教室というのは無人でも緊張するもので。
私は一応「失礼しまーす」と小さく声にしてから中へと侵入した。
先輩の席は、窓際の後ろから2番目だと記憶している。
なぜ後輩の私が覚えているのかというと、夏休みの初め頃、忘れ物をしたという先輩に付き添って訪れたことがあったからだ。
その時に見た先輩の机のいたずら描きは衝撃的だった。