「普通なら"いつも"とか"今日の"だと思って、少し引っかかってたんです」
ただの言い間違い?
それならそうだと言えばいいだけだ。
なのに、水樹先輩は何も話さなくなってしまった。
さっきまで私を見ていた綺麗な瞳も、今は目の前にある体育館をぼんやりと映している。
それは、夏休みが始まった頃に、屋上があまり好きじゃないと呟いた先輩を思い出させて。
ううん、それだけじゃない。
夏休みに入る辺りから、こんな先輩を幾度か見ている。
そして……私はその度に聞きたかった。
「……水樹先輩、何かあったんですか?」
先輩が何を思っているのかを。
不意に、自分の発した言葉で、水に濡れた日、同じことを水樹先輩から聞かれたのを思い出した。