「真奈ちゃん、顔赤いけど」
「えっ!?」
水樹先輩に指摘されて、私は音が出る勢いで頬を両手で隠した。
「き、今日は暑いからですかねー」
いけない。
このままだと、からかわれて振り回されるパターンだ。
どうにか誤魔化そうと頭の中の引き出しを開けて、ガチャガチャと話題になるものを探す。
と、出てきたのは赤名君を助けに行った時に不思議に思った言葉だった。
「あの、先輩」
「ん?」
「私が先輩に助けてもらった時、"今回の君は"って言ってましたよね?」
「……そうだっけ」
──また、惚けてるのかな?
私がここで引けば、多分会話は終わるだろう。
でも、今まで何度ももやもやしてきたせいか……
「言ってましたよ? 不思議だったから覚えてます」
今日は引きたくなくて、突っ込んでしまった。