水樹先輩が生徒会室から出て行ったのは知っていた。

どこかでお昼寝でもしてるのかなって思ってた。

だからこんなの、想像もしてなくて。

見ない振りをするのが精一杯で。

とにかく、ここから離れよう。

そう思って止まっていた足を動かせば。


「真奈ちゃん」


水樹先輩に声をかけられてしまった。


「もしかして、体育館?」

「は、はい」

「じゃあ、俺も行こうかな」


微笑みながら、先輩が私に歩み寄ってくる。

その様子に、水樹先輩のお友達は、驚いて「え、ちょっと!」と呼び止めた。

けれど、水樹先輩は私の横に並ぶと振り返って。


「ごめん、他の人探して」


笑みを添えて伝えると、さっさと体育館の方へと歩いて行ってしまう。

私は慌てて水樹先輩の背中を追った。