「えっ? だって、あの時……」
「あれは嘘。でも、今後の牽制にはなるだろ?」
説明され、改めて先輩の機転の良さに感服する。
私なんて考えなしで割り込むことしか出来なかったのに。
「先輩ってすごいですね」
「そうかな? 普通だと思うよ」
「すごいですよ。それと、ありがとうございました。私まで助けてくれて」
あの時、水樹先輩がいなければ多少なりとも怪我くらいしていただろう。
「うん。真奈ちゃんに、何もなくてよかった」
緩く微笑んだ水樹先輩に、優しい言葉に、恋する気持ちが騒ぎ出す。
密かにドキドキしてる私の隣で、先輩は不意に空を見上げた。
「今日も暑くなりそうだね」
蝉の声に重なる先輩の柔らかな声に私は……
「そうですね」
頷き、2人並んで、学園の門をくぐった。