「だ、騙されてんだろ。人の金盗むような奴だ。騙すのだって……」
僅かに尻すぼんでいく声に、三重野先輩が小さく溜め息を吐いた。
「そんな器用な子じゃないわ。それに、私たちを騙せるのなら、あなたたちだって騙せたままのはず」
三重野先輩の話に会長が大きく頷いて。
「よく考えるといいさ。誰が、君達を騙し続けてるのか」
そう告げると、3人は明らかに困惑した表情になる。
「そ、そんなわけ……」
尚も否定する声が聞こえてきた直後──
「……いいよ。信じてくれなくて」
赤名君が、静かに言う。
「僕には、ちゃんと信じてくれる人たちがいるから、それだけでいい」
その顔からはもう、青白さはなくなっていて。
「とにかく、僕は盗ってない。だから、お金を渡す義理もないよ」
言って、赤名君は落ちていたお財布を拾うと、元クラスメイトの手に握られていたお札を取り返した。