「モッチー!」


私は声を上げることすらできず、ふらついてしまう。

しかも、体勢をどうにか保つことができなくて。

足元に広がるでこぼことした岩にぶつかることを覚悟した次の瞬間。


がっしりと、背中から私を抱き締めるように体が支えられた。


柔らかい香りは、私の好きな人のもので。


「今回の君は、本当に危なっかしいな」


耳元で囁かれた言葉に、首を僅かに水樹先輩の方へ向ける。


「挫いたりしてない?」


労わるように微笑まれて、私はコクコクと頷いた。

ありがとう、とか、今回って、とか。

声にしたい言葉はあったけど。


「女の子に随分ひどいことするね、君たち」


水樹先輩から発せられる声が、聞いたことのない冷たさだったから、私は何も言えずに身動きも出来ないままでいた。