会長と三重野先輩のやり取りに、私は感心する。
会長の指示の早さもだけど、三重野先輩の判断というか……
自分の気持ちを優先させるんじゃなく、最善と思える方法を選択する強さに。
「行こう、真奈ちゃん」
水樹先輩に優しく背中を押され私が頷くと、それを合図にしたかのように、みんながそれぞれの方向へ散る。
私の記憶にある今日、赤名君はそんなに時間もかからずに戻ってきた印象がある。
もし同じであれば、ここからそんなに遠くには行っていないはずだ。
「真奈ちゃん、足元気をつけて」
「はい」
岩場の足元は不安定で、ビーチサンダルを履いてるせいもあって歩きにくい。
水樹先輩が先に立ち、私はその後ろを慎重に歩きながら赤名君の姿を探した。
波がごつごつとした岩にぶつかる音がする。
ザバン、ザバンと飛沫を上げる水音に、ふと──
「……せ……ぃ……」
人の声が聞こえた。