どうして水樹先輩は、寝ぼけながら私に謝っていたのだろう。
そんな事をふと思ったのは、高杉さんの住むアパートに到着した時だった。
寝ぼけていたのだから、意味はないのかもしれないけど、自分のことだからなんとなく気になってしまって。
けれど、そんな疑問も、高杉さんの家のドアが開くと頭の中のどこかにしまわれた。
「そうかー、みんな僕の後輩かー」
ニコニコしながら高杉さんが私たちに麦茶を出してくれる。
会長が「すみません急におしかけて」と謝ると、高杉さんは笑みを深めた。
「いやいや、こちらこそ。携帯さえトイレに落とさなきゃ、こんなとこまでわざわざ来なくてすんだだろうに」
……ということで、どうやら携帯をトイレに水没させたらしく、データがおしゃかになったらしい。
ご両親には携帯が直ったら連絡するつもりだったけれど、忘れていたと笑う高杉さんは、私たちの素性を知ると、快く家の中にあげてくれた。
先生の話していた通りの優しい人。