「家にそれを感じるようになってから、教室にいても、誰かと話してても、自分の居場所がわからなくて。だから、人がめったに来ない屋上に自然とよく行くようになった。そしたらある日……」


先輩の頬が優しげに緩んで。


「君が俺を踏んだ」


まさか、ここで私の過去の失態がほじくり返されるとは予想もしてなくて、とっさに背筋を正してしまう。


「い、痛かったですよねっ。あの時は本当にごめんなさい」


今日のことといい、本当に私ってどんくさい。

踏まれるわ川に落とされるわ。

水樹先輩もいい迷惑だよ。


だけど、迷惑な素振りなんてまったく出さない水樹先輩。

今日までにしてきた私の失敗を全部、先輩は柔らかい笑顔で受け止めてくれた。

今だってそう。

目を細めて、口元に笑みを浮かべて。


「でもさ、踏んでくれて良かった」


こんな風に、また優しく……


って、ええっ!?

まさかのドM発言!?

SとMは紙一重だと聞いたことがあるけど、そういうことなんですか先輩!?