「真奈ちゃんが、俺の服着てるの」
言葉にしながら、くすぐったそうにはにかむ。
「そ、そうですか?」
先輩の言葉と表情のせいで、心臓の高鳴りは増す一方。
せめて先輩の顔は見まいと、私はテーブルの上に置かれているグラスに視線を移した。
丸いフォルムのグラスには、先輩のオススメだというレモンジュースが注がれている。
いただきますと告げてから少しだけ喉に流し込むと、爽やかなレモンの香りがほんのりと鼻から抜けた。
口に広がる甘さはしつこくなく、さらっとしていてとても美味しい。
「これ、飲みやすくて美味しいですね」
感想を述べると、水樹先輩は「だろ?」とちょっとだけ得意げな顔をして微笑んだ。
「ところで、体冷えてない?」
気遣われて、私は首を横に振る。