『 真奈ちゃんっ……! 』



目の前の光景に、知らないはずの光景が脳裏で重なった。


それは、本当に一瞬の出来事。


けれど……


水樹先輩の悲痛な表情と、彼の後ろに見えるオレンジ色の空が印象的で。


「真奈ちゃん?」


不思議そうに私の名前を呼ぶ声に、私はどこかに行きかけてた意識を現実へと戻した。

気付けば、私の手は先輩の手に重ならず、中途半端に先輩へと伸ばされたまま。

怪訝そうに見つめる水樹先輩に、私は焦って笑みを作った。


「す、すみません。ぼーっとしちゃって」


慌てて先輩の手に自分の手を重ねたけど、急いだのが良くなかったようで。


「わわわっ」


川底にあった石か何かに躓いた私はバランスを崩し──


「きゃあっ」

「うわっ」


大きな水音を立てて。


水樹先輩もろとも、川に落ちてしまった。