「必死に探すほどなのに意味はないんだ?」
「か、影沢君!」
「そういうことなんですか三重野先輩っ」
「ちちち、ちがっ……私は、あんな人のこと微塵も好きじゃないんだからっ」
喋る声が何度か裏返る。
フフッ。
私も水樹先輩も「好きなのか」とは尋ねてないのになぁ。
だけど、これ以上突っ込むのも可哀想な気がしたので、私たちは「はいはーい」なんてからかうような声で返答し、アヒルのストラップ捜索を続けた。
──そして。
水樹先輩が「あ」と声を発したのは、探し始めてから1時間ほど経った頃だった。
「ぶさいくなアヒル発見」
水樹先輩が指で挟んでブラブラさせているのは、まさしく夏祭りで見たチープなアヒルさんで。
「三重野先輩! 良かったですね」
まだ川に足を浸したまま拍手して喜べば。