その時ふと、子猫の事が脳裏に浮かぶ。


行動を起こすことによって変わった未来。

具体的に何をすればいいのかはわからないけど……

記憶に残るあの夏に出来なかった何かを変えていくことによって、先輩の存在をつなぎとめる事ができとしたら?


だとしたら、子猫の時のように覚えていることに出くわしたら、とにかく行動を起こしてみるのがいいのかもしれない。


からっと晴れた空の下。

そんなことを頭の片隅で考えながら、私は水樹先輩と2人、2両編成の電車に乗り、高陵駅に降り立った。


瑚玉学園のある瑚河(こがわ)駅と高陵も含め、この辺りの駅は単線だ。

木造の小さな駅にはベンチが2つと自動販売機がひとつ。

改札で駅員さんに切符を渡して、駅から出ると、目的の木材店を探しながら商店街を歩く。


「それにしても、スノコを置いて地面との空間を作るのはいいアイデアですよね」

「そうだね。案を出してくれた玉森はカルボたちの救世主だ」


柔らかく微笑む先輩。

トクンと心臓がひとつ高鳴って、意識しないようにしていた【デート】という言葉が私の頭の中をぐるぐる回り始める。