「いいですか? 水樹先輩」


1人でも平気だと言ってたし、もしかしたら1人の方がいいのかなと少し思ったんだけど。


「真奈ちゃんと商店街デートかぁ。嬉しいな」


水樹先輩は、楽しそうにそう言った。

デートという単語に私の頬が熱を持つ。

会長が何かキーキー騒いでたけど、その会話もうまく入ってこないほど、私は今日もまた水樹先輩の一言に振り回されていた。


その後すぐに解散となると、三重野先輩はいそいそと鞄を手にして。


「じゃあ、また明日」


生徒会室の扉を開けると一番に出て行った。

それはどこか焦っているように見え、珍しいとみんなは顔を見合わせる。


……私以外は。


私には、覚えのある光景だった。

覚えはあるけど、思い出したのはたった今。

三重野先輩が急いで出て行く後姿が、過ぎたはずの夏の光景と重なったからだ。