「……急にどうしたの?」
問われ、私は自分が言ってることが普通に考えたらおかしいことに気付いた。
「い、いえ……そんな……夢を、見たので」
つかんでしまった手が、今更だけど恥ずかしくなって、離そうと力を抜いたら──
「俺はここにいるよ。今だって、君のそばにいる」
キュッと、繋ぎとめられた。
ちゃんとここにいるよと、伝えるように。
「……はい」
握り返すと、さっきまで煌々と輝いていた月が雲に隠れて。
先輩を照らす月明かりも消えて、目の前の先輩を翳らせる。
姿を隠すように。
その光景が、先輩の未来を告げているような気がして……
私は不安をかき消すように
先輩の手を
強く握った。