ザッ……と、木々が風に吹かれ枝をしならせる。
「そうだったんですね……」
聞いてはいけなかった事に触れてしまった罪悪感。
私が「ごめんなさい」と謝ると、水樹先輩は微笑み「大丈夫」と言って話を続ける。
「別に死んだとかじゃないから気にしないで」
そして先輩は、子猫たちを見つめながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「うちは、俺が小さい時に親が離婚しててさ。俺は母親に引き取られたんだ」
「じゃあ、今はお母さんと2人で暮らしてるんですか?」
「ううん。再婚したから3人暮らし。まあ……あんまり顔合わせないから、3人で暮らしてる感じはしてないけどね」
「ご両親、忙しいんですか?」
顔を合わせないなんて、共働きなんだろうか。
そう思って、軽い気持ちで聞いた私だったけど。
「そうじゃないんだけど……俺はほら、お邪魔虫だから」
先輩が苦笑いを漏らしたのを見て、後悔した。