「いいじゃないか」
「校長!」
教頭先生が驚き口にした言葉に、私は弾かれるように顔を上げた。
水樹先輩たちも同じく顔を上げ、職員室に入ってくる人を目で追う。
少しふくよかで、笑うと目のなくなっちゃう校長先生は、嬉しそうに私たちを見つめた。
「大切な命の為にでき得ることをする。生徒会の諸君はとても素晴らしい」
何度も首を縦に振りながらそう言うと、校長先生は職員室にいる先生たちに伝える。
「許可します。飼い主が見つかるか、猫が独り立ちするか。それまで餌は生徒たちに呼びかけ、猫を飼っている家からわけてもらうことにしよう」
そして最後に私たちに向かって「頑張って世話してあげなさい」と言うと、背を向け職員室を出ようとする。
私たちはその背中に頭を下げて。
「ありがとうございます!」
重なる感謝の声に、校長先生は振り返り、ニッコリと笑った。
隣を見れば、水樹先輩は本当に嬉しそうに微笑んでいて。
私は、あの悲しい夏の光景を明るいものに変えられて良かったと、心から思ったのだった。