スターツ出版文庫編集部 特別座談会!「スタ文大賞の新テーマについて」
2024年8月
司会:第9回スターツ出版文庫大賞についての編集部座談会を始めます。よろしくお願いします。
編集A・B・C・D・E:よろしくお願いします。
司会:早速ですが、今回、部門やテーマについて、変更点が多いですね。
A:そうですね。特に新部門の追加は大きい部分でもありますし、既存部門の変更点についてもこの座談会を通して、改めて知っていただけると嬉しいです。
①青春・恋愛
B:じゃあ「①青春・恋愛」からいきますか。
司会:この部門は変更点少なそうですが、Bさんどうですか?
B:いい意味でも、もしかしたら逆の意味でも王道ですね。
D:逆の意味でっていうのは?
B:ある意味、書きづらい人もいるのかなと。もちろん、良しあしではないですが作家さんの書きたいものとのマッチングの意味合いで。
司会:それはありますね。変更点はありますか?
B:はい、あります。昨年の内容に追加で一文、「ラスト、感動を呼ぶ仕掛けのある作品を期待しています。」と入れさせていただきました。
司会:具体的にはどういう仕掛けを想定していますか?
B:本当にこれもある意味王道なんですが、超例えば、女の子主人公の作品で、彼女に寄り添ってくれるすごく強い存在に見えるヒーローの側に”ある弱み”があったり…など、ですかね。その弱みにオリジナリティのある仕掛けがあると素敵ですね。最後のもう一展開にもなりますし。
E:王道の中で、王道だからこそ読者を驚かせ、感動させる仕掛けがあるとより際立っていいですよね。
A:ちょっと違うかもしれないのと、ネタバレになるのであまり詳しく言えませんが、近しい意味で最近読んだ森田碧さんの『余命88日の僕が、同じ日に死ぬ君と出会った話』(ポプラ文庫ピュアフル)はラスト、驚きましたし、感動しました。
B:わかります。面白いですよね~。”よめぼく”シリーズ第一弾からそうですが、余命というのは王道でありつつも、その中で本作ならではの魅力があって、人気なのも頷けます。
C:そういう意味では、一昨年にスタ文大賞を受賞した九条 蓮さんの『夏の終わり、透明な君と恋をした』も、昨年に優秀賞を受賞した長久さんの『余命一年、向日葵みたいな君と恋をした』(いずれもスターツ出版文庫)も、ラストの仕掛けが魅力的でしたし、泣けましたよね。
B:確かに。
司会:なるほど。「①青春・恋愛」は、王道を募集しつつも、その中でラストにもう一展開、もう一泣きあれば…という感じですかね?
B:そうですね。どうしてもある程度王道が決まっている分、どう差異を出すかという意味でそういう作品は強いと思います。
司会:なるほど。ありがとうございます。王道という話がありましたが、今回、そこと相反する「④“アンチ青春“エンタメ」部門が新設がされましたよね。
C:この流れで「④“アンチ青春“エンタメ」にいきますか。
A:そうしましょうか。
『余命88日の僕が、同じ日に死ぬ君と出会った話』森田碧/著(ポプラ文庫ピュアフル)
『夏の終わり、透明な君と恋をした』九条 蓮/著(スターツ出版文庫)
『余命一年、向日葵みたいな君と恋をした』長久/著(スターツ出版文庫)
④“アンチ青春“エンタメ
司会:まず、“アンチ青春”について。これはどういった意図でしょうか?
C:意図としては2つあって、1つは恋愛が主軸ではないというところです。
D:それは凄くわかりやすい。「①青春・恋愛」との違いですよね。要素として入る分にはいいんですか?
C:はい。大丈夫です。恋愛が1ミリ入っているからカテゴリーアウトということはありません。が、主軸でない以上、それ以外の大きな要素があるといいなと思います。
司会:もう1つは何でしょう?
C:ちょっと脱線しましたね。もう1つは“理想と希望に溢れたキラキラ青春”ではないという意味です。良しあしではなくいずれも素敵なのですが、あくまで「④“アンチ青春“エンタメ」部門で募集したい作品のイメージとしてですが…。「①青春・恋愛」では、強い絆や永遠の愛を通して、主人公の成長に勇気を貰う物語を読めると嬉しい一方で、「④“アンチ青春“エンタメ」では人間の裏や、もしかしたら人に見せたくないようなところ、綺麗ごとじゃない部分、抱えている本当の弱さが暴かれたり、ぶつかったりすることで、自分と向き合い、間違えたっていいと主人公が自分を肯定できるような物語が読めると嬉しいですね。
A:綺麗ごとじゃないってことですかね。キラキラしてないという話もありましたが。
D:確かにそうですね。「①青春・恋愛」は物語だからこそ希望を読む物語だとすると、「④“アンチ青春”エンタメ」はその逆で、物語だからこそ、主人公が他人の弱さや本音、コンプレックスに出会い、それをきっかけに同じように自分の弱さとも向き合い、ぶつかるようなお話が読めると嬉しいですね。物語だからこそ読める他人のリアルの物語というか。
司会:リアルって、いつも見えているわけではないんですか?
C:見えている部分は当然あるんですけど、本当の“リアル“な部分は違うというか。例えば、私もSNSなんかで自分以外が皆幸せそうに結婚している姿を見ていると、そんなこと言われていないのにあたかも結婚してない自分が間違っているかのように思ってしまったりするんですよね…。皆結婚して幸せそうなのに、そうじゃない自分は普通じゃないのか、間違っているんじゃないか、って自分が嫌になったり。でも、実際は結婚しているいないはどちらでもいいわけじゃないですか。結婚しているから絶対幸せなのかというとそうとは限らないわけで。でも、皆のキラキラしている部分だけを見ていると、自分の弱い部分、苦しい部分、惨めな部分、コンプレックスだけが目について息苦しく感じてしまうことがあるのかなと。もちろん、実際は自分以外も皆そういう部分がある、でも現実では人のリアルは中々知れない。だからこそ物語で、普通じゃない人なんていないとか、弱くない人なんていないとか、間違ったことのない人なんていない、と知れることで、自分を肯定できると素敵だなと。
司会:なるほど。
E:今のは結婚の例でしたけど、仕事でも同じですよね。
C:というと?
E:これも例えですけど、就活が上手くいかずにいる人にとっては、すごく毎日忙しそうに働いている会社員の人が眩しく見えたりすることもあるかもしれませんけど、実際はとんでもないブラック企業で毎日とっても苦しいかもしれないじゃないですか。
A:逆もしかりですよね。激務の人からすると、フリーターの友達が自由気ままに生きているように見えるけど、その友達には友達で思う部分や苦しいところがあって…。
C:わかります。だからこそ、そんな主人公が、物語を通して、弱くたって間違えたっていいという部分で、前に進めたり変わっていったり、読者もそれを通して勇気を貰えると素敵ですよね。
A:恋愛やヒーローとの出会いではないですけど、主人公が成長して変わっていくという部分は「①青春・恋愛」と同じですよね。
C:そうですね。アプローチが違うだけで同じイメージです。皆違って、どこまでいっても他人のことは100%分かり合えない世の中だけど、君とは分かり合えるというのが「①青春・恋愛」で、やっぱり分かり合えないんだけど、それでも分かり合いたい、あるいは分かり合えなくたっていいじゃないというのが「④“アンチ青春”エンタメ」のイメージです。どちらもそこを通して主人公が生きやすく、前を向けるという部分で同じです。
B:恋愛で言うと、永遠の愛の物語って、人によっては失恋の真っ最中にいるときとかちょっと読みにくいときもありますもんね。そういうときに逆に他人の失恋談なんか読んだりするのと似てますね。自分以外にも上手くいってない人の話聞くと、それでいいんだって安心できますし。安心することで次の恋愛に踏み出せる意味では、失恋の物語もある意味前向きってことですもんね。
A:それでいうと、辻村深月さんの『傲慢と善良』(朝日文庫)とかすごく好きでした。
B:あれはリアルですよね。自分のモヤモヤを言語化してくれてるというか…。すごく刺さりました。先も気になってグイグイ読まされますし。
司会:なるほど。“アンチ青春”という部分について、ありがとうございます。その後ろに“エンタメ”とついているのは、そういったグイグイ読まされるという部分ですか?
C:そうですね。このテーマって「①青春・恋愛」とくっつけようとすると少し難しいんですよ。かっこよく素敵なヒーローに出会って、救われて、恋をするという部分とはちょっとくっつけにくいというか。
A:こんな恋してみたい、みたいなキラキラした恋愛とは真逆ですもんね。
C:ヒーローの弱さや、コンプレックスが強すぎると、恋愛小説として、ヒーローのカッコよさに惹かれづらくなってしまいますし。もちろん、上手く落とし込んでめちゃくちゃ面白い作品もあると思うんですけど、難しい。そういう意味で、恋愛以外で物語を引っ張り、読者さんが楽しんで読める要素があるといいなと。
D:恋愛だと、主人公がヒーローやヒロインと出会うことで主人公が変わっていったりしますけど、「④”アンチ青春”エンタメ」では、極限状態に追い込まれるからこそ、むき出しになったり、ならざるを得なかったりして、そこで登場人物同志がぶつかっても面白いですよね。
E:デスゲームとかもそうですよね。学校に閉じ込められたり。
B:ちょっとズレるかもしれませんが、浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』 (KADOKAWA/角川文庫)は、エンタメ感満載で一気読みしてしまいました。六人の嘘、裏と表がひっくり返っていくのが面白くって。あれもある意味特殊な状況に追い込まれている状況なのかなと。
C:めちゃくちゃ面白いですよね。何度驚かされるんだ…という。
『傲慢と善良』辻村深月/著(朝日文庫)
『六人の嘘つきな大学生』浅倉 秋成/著 (KADOKAWA/角川文庫)
D:私は夏木志朋さんの『二木先生』(ポプラ文庫)も好きです。ヤバい先生×イタい高校生のお話。序盤は畳みかけるようなエンタメで、二人の応酬がとにかく気になるんですが、ラストは爽やかで、自分らしく生きる勇気を貰いました。
A:読んだ後にすごく話したくなる作品ですよね。感想を言い合いたくなるというか。
E:山田悠介さんの『キリン』(KADOKAWA/角川文庫)も面白いですよ。テーマとしては結構突っ込んだもので、これも恋愛はほぼないんですが、どう結末に向かうのか夢中で読みました。
司会:なるほど。“エンタメ”は広く“面白く読める”という部分ですね。
C:そうですね。テーマとしては“アンチ青春”。ただ憧れられるようなドキドキする恋愛、二人の距離感を応援したくなり先が気になってしまうハラハラする恋愛がない分、読者さんにページをめくらせるような先が気になる軸があると嬉しいですね。ミステリー、ホラー、サスペンスの要素など。もちろんそこにハマらないものも大歓迎です。
A:普段はあまり本を読まない人も、思わずグイグイ読んでしまうような、先が気になる秘密、謎、心理戦、なんかがあるといいですね。“アンチ青春”の要素だけで重く暗くなってしまうと中々読んでもらいづらいので、そういう意味で“エンタメ”要素がある作品が読めると嬉しいですね。
C:はい。すみません、色々話過ぎてしまったんですが、ものすごい仕掛けがないとダメとか、あっと驚くどんでん返しがないとダメとか、必ずしもそういうわけでは全くありません。もちろんそこも楽しみなのですが、一番はそういった出来事や状況、出会いを通してどう主人公たちが変わっていく物語なのかがポイントかなと。ぜひ、皆さんの想う「④“アンチ青春”エンタメ」をご応募いただけますと幸いです。
『二木先生』夏木志朋/著(ポプラ文庫)
『キリン』山田 悠介/著 (KADOKAWA/角川文庫)
②虐げられヒロインのシンデレラファンタジー
司会:では次、「②虐げられヒロインのシンデレラファンタジー」について。ジャンルの区分けが昨年の「②あやかし・和風ファンタジー」「③後宮ファンタジー」と変わりましたね。
D:そうですね。前回は「あやかし・和風」「後宮」と舞台設定を指定していましたが、今回はその括りがなく、その代わりにヒロイン像で分けている点が最大の特徴だと思います。
A:「②虐げられヒロインのシンデレラファンタジー」はその名の通り、『シンデレラ』という超名作古典(?)のストーリーラインに寄せたものですよね。
E:そうですね。このジャンルの作品が数多く世にある今、その中でいかにオリジナリティを出していくか。というところがコンテストにおいては重要になりそうです。
D:シリーズ累計400万部突破の、クレハさん『鬼の花嫁』シリーズ(スターツ出版文庫)は、運命の出会いから始まりますが、ド王道の強さここにありという感じです。
C:ほかにも湊 祥さんの『鬼の生贄花嫁と甘い契りを』シリーズでは生贄となるところから、香月文香さんの『無能令嬢の契約結婚』シリーズ(いずれもスターツ出版文庫)では愛のない契約結婚から物語が展開していきます。
『鬼の花嫁~運命の出逢い~』クレハ/著(スターツ出版文庫)
『鬼の生贄花嫁と甘い契りを』湊 祥/著(スターツ出版文庫)
『無能令嬢の契約結婚』香月文香/著(スターツ出版文庫)
A:「生贄花嫁」設定は王道で人気でしたが、作品が増えていく中、ヒロインの虐げスペックでオリジナリティを出すのはよいと思います。『無能令嬢の契約結婚』や、皐月なおみさんの『龍神の100番目の後宮妃』(スターツ出版文庫)のように、タイトルになり得るキーワードだと理想的ですね。
D:確かに。それと『鬼の花嫁』もそうですが、虐げスペックとして「姉妹格差」設定は根強い人気ですね。ベリーズ文庫でヒットしている、友野紅子さんの『拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています』は西洋設定ですが、姉妹格差をタイトルに打ち出したシンデレラ溺愛ストーリー。こういったオリジナリティがあるといいですね。
B:あと、今までの王道は「虐げヒロイン×最強ヒーロー」が人気でしたが、最近では、友麻 碧さんの『傷モノの花嫁』(講談社タイガ)のように、ヒーロー側も傷や弱さを持っている、ふたりとも傷もの同士、という設定も人気です。
A:互いの弱さを補い合うことで、初めて幸せを築ける、唯一無二の関係、比翼連理のふたりという点が強調されればされるほどドラマティックなシンデレラストーリーになるのだと思います。
C:ラスト、ヒロインがヒーローに愛され、幸せになるという着地が約束されているのが「シンデレラストーリー」のいいところですよね!読んでいて安心感があります。
B:その中でハラハラするような展開、例えばふたりの愛が脅かされるよう危機が来るとか、そういう苦労を乗り越えた上での大団円!となると感動もするしキュンキュンします♡
一同:笑
D:そうですね!和風・あやかしでも後宮でも、さらには西洋でも舞台設定は様々で、作品のフックとなるヒロインの虐げられ要素や、ヒーローの弱さなどにオリジナリティをプラスしたシンデレラストーリーをお待ちしています!
『龍神の100番目の後宮妃~宿命の契り~』皐月なおみ/著(スターツ出版文庫)
『拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています』友野紅子/著(ベリーズ文庫)
『傷モノの花嫁』友麻 碧/著(講談社タイガ)
③型破りヒロインの活躍ファンタジー
司会:続いて、「③型破りヒロインの活躍ファンタジー」について。「②虐げられヒロインのシンデレラファンタジー」と異なる大きなポイントはどこになるのでしょうか?
E:まず、ヒロイン像の違いですね。「②虐げられヒロインのシンデレラファンタジー」のヒロインは、虐げられ、自分は愛される価値など無い、だから生贄花嫁になり死ぬことも受け入れるマインドです。それに対し、「③型破りヒロインの活躍ファンタジー」のヒロインは、特別な能力を持っていたり、やりたいこと好きなことが明確にあり、自己実現を望んでいます。
B:「②虐げられヒロインのシンデレラファンタジー」は、愛を知らず、愛に飢えているからこそ、ヒーローに溺愛されることで、初めて自己肯定できて、幸せを感じるわけですね。一方で、「③型破りヒロインの活躍ファンタジー」のヒロインは別に愛を求めてない?
D:「③型破りヒロインの活躍ファンタジー」のヒロインは、基本的に自己実現に愛は邪魔だと思っているんですよね。何かしら自己実現できない境遇があり、そこから解き放たれるきっかけを得て、自身の活躍によって気づけば、求めていないのに、愛されてしまっている。それが設定としてわかりやすいジャンルが「離婚もの」ですよね?
A:あさぎ千夜春さんの大ヒット作『初めましてこんにちは、離婚してください』(スターツ出版文庫)がそうですね。さっき言っていた「自己実現できない境遇=望んでいない政略結婚」というパターンが王道ですね。
C:まず、離縁状をヒーローに突き付けるところから始まるわけなので、「③型破りヒロインの活躍ファンタジー」のヒロインは、「②虐げられヒロインのシンデレラファンタジー」のヒロインと対照的に、気が強く、意見をはっきり言う女性が多い印象。
E:そこもポイントですね。コミックも大ヒットしている、久川航璃さんの『拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきます』(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)は、西洋設定の離婚もので、ヒーローが提示する「1か月以内に妊娠しなかったら離婚しよう」という離婚条件が面白い!
B:あと、この作品は、ヒロインに「悪女の濡れ衣」が着せられていて、それも自己実現の足かせになっていたりしますよね。「③型破りヒロインの活躍ファンタジー」は、「悪女」ジャンルも大歓迎です!
『初めましてこんにちは、離婚してください』あさぎ千夜春/著(スターツ出版文庫)
『拝啓見知らぬ旦那様、離婚していただきます〈上〉』久川航璃/著(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)
A:「悪女」は西洋や異世界ファンタジーのイメージが強いかもしれませんが、中華後宮設定で、中村 颯希さんの『ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~』(一迅社ノベルス)は大好きな作品です。
C:スタ文でやるなら、中華後宮設定と「悪女」のかけ算はよさそうですよね。恋愛要素は薄く、自己実現メインの作品ですが、入れ替わり設定がキャッチ―。
D:キャッチ―な設定は、どのジャンル作品でも要ですね!「離婚もの」のような恋愛作品もありだし、活躍メインの「後宮もの」もありということですね。和風あやかし設定に、異世界ファンタジーっぽい活躍ヒロインをかけ算するのもありだと思います。
E:たとえば「転生ヒロイン」や、「ループ」と和風あやかしかけ算は新鮮ですね!「転生ヒロイン」だと、涙鳴さんの『後宮医妃伝』シリーズ(スターツ出版文庫)がありますね。この作品の場合、元看護士という医療チートでした。
B:「チート(異能)」要素もキーですね!あとは活躍し、皇帝に愛されたり、成り上がったことで、結果的に自分を排除していた者たちに「ざまあ」できる展開はみんなが大好きな部分ですね 笑
E:たしかにそこ重要ですね。「②虐げられヒロインのシンデレラファンタジー」も「③型破りヒロインの活躍ファンタジー」でも、「ざまあ」要素が不可欠な点は共通するところですね。「ざまあ」は気持ちいいですから 笑
『ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~』中村 颯希/著(一迅社ノベルス)
『後宮医妃伝~偽りの転生花嫁~』涙鳴/著(スターツ出版文庫)
⑤フリーテーマ
司会:では最後に、「⑤フリーテーマ」についてです。こちらは①~④部門に該当しない作品ということで昨年と変わらないでしょうか?
B:そうですね。①~④部門に該当しない作品を募集する部門ということは変わりません。ですが、今後スターツ出版文庫としてチャレンジしていきたいテーマとして考えているのは、40代女性をターゲットとした、癒しテーマの作品です。
A:仕事を終わらせた後、家に帰ってひと息つきながら読むとしたら、とにかくほっこり癒されたいですもんね~。
C:そうなんです。ちょっと嫌なことがあった日や、失敗してしまった日など、気持ちが落ち込んでしまっているときに、湯気に包まれた美味しそうなごはんの描写や心が温もるような作品の言葉ってとても心に沁みます。
B:疲れた夜に心に寄り添ってくれるお話ですね!食もの作品だと、原田ひ香さんの『ランチ酒』(祥伝社文庫)、大好きです。疲れた夜に特別な甘いスイーツを食べるのも幸せな気持ちになりますね。中山有香里さんの『泣きたい夜の甘味処』(KADOKAWA)なんかまさにそう。
D:私の場合、真夜中のアイスを食べる時間ってちょっとした自分へのご褒美になって、普段食べているアイスにさらに季節のフルーツと合わせたりして特別感を出すと心が満たされます~!
B:そうですよね。そんなちょっと傷ついた心をほっこりと癒してくれて、少し前を向こうという気持ちにさせてくれるような作品をお待ちしております。猫ものも大歓迎!
E:食と猫、二大癒し要素ですね 笑 石田 祥さんの『猫を処方いたします。』(PHP文芸文庫)は猫の書影に惹かれて読みました。実家の猫を思い出して泣けました…。
A:あとは最近注目しているのは、女友達との同居暮らしなどの新しい生き方を描いた作品です。
B:いわゆる「シスターフッド」ジャンルですね。生きていくうえで結婚、出産、仕事などさまざまな選択を女性たちはしていきますが、でもその選択のひとつ、結婚しない生き方、女友達と生きる選択を描いた作品が増えています。
C:それぞれ違う選択をしてきた女性たちが、再会をきっかけに同居していくお話。藤野千夜さんの『団地のふたり』(双葉文庫)などがそうですよね。ドラマ化が9月からスタートするので、楽しみです!
B:現代を生きる女性の生き方を応援できるような作品をお待ちしております。
『泣きたい夜の甘味処』中山有香里/著(KADOKAWA)
『猫を処方いたします。』石田 祥/著(PHP文芸文庫)
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