春爛漫の帝都にて、民は桜に敬意を払う。

 「さくらよこい、はやくこい」

 天子一族の象徴花としてこの時期から一斉に開花する帝都桜は、まるで民に寄り添い、見守るように至る所で咲き誇る。

 朗らかな陽気に心が躍り、溌剌とした商人の売り文句が飛び交い、輪回しで駆ける子どもの口ずさんだ笑い声が響く。

 「こい、こい、はーやくこい!」

 「さくらのまつりよ、はやくこい!」

 安寧を享受する帝都の民が、最も浮足立つ理由。

 永桜祭。

 天子一族の名のもとに開催される神聖な春の祭事だ。