エーデルも無事に見つかり、また新しい命が誕生した事を祝って、村では盛大な宴が行われた。人々の顔には安堵と歓喜の色が浮かび、賑やかな笑い声が島の夜空に響き渡る。

「まさか……私が眠っている間にそんな事があったなんて」

賑やかな喧騒から少し離れた場所で、ソフィアが呆然としたように呟いた。

遺跡からザハラの家に戻った時、ソフィアは目を覚ましていたんだ。

彼女が無事に目を覚ました事に心から喜んだ俺たちは、ソフィアが眠っている間に起こった、闇の魔力のこと、魔剣エクレールとの契約、エーデルの出産、そして子竜の誕生という一連の劇的な事件の事を、全て彼女に話した。

そしてそのままソフィアは、半ば強引に宴へと引っ張り出されてしまった。

「ソフィアちゃん! ほんっっっとに目が覚めてよかったよ!」

さっきまでカレンの側から一歩も離れようとしなかったロキは、今度はソフィアの側から離れようとしない。まるで大きな犬がご主人に再会したかのように、嬉しそうにソフィアにまとわりつく。

そんなロキを、ソフィアは困ったように苦笑しながら相手をしていた。

さすがにまだ病み上がりのソフィアにロキの相手をずっとさせるわけにはいかないと思い、俺がソフィアからロキを引き離そうとした、その時だった。

「駄目なのですよ!」

甲高い声と共に、ロキとソフィアの間に、きらびやかな姿のエクレールさんが割って入ってきた。

「え、エクレールさん?」

驚いて声を上げる俺たちに構わず、エクレールさんはロキにピシャリと言い放つ。

「さすがのわたくしでも、ソフィアちゃんのお婿さんは真剣に選びたいと思うのです」

「お、お婿さん?! てか……あなた」

誰? と、ソフィアが言葉を続けようとした瞬間、エクレールさんはソフィアをギュッと抱きしめた。

「はう〜……とても可愛いのです。とてもキュートなのです。さすがソフィアちゃん!」

「あ、あのっ……」

ソフィアをめっちゃ愛おしそうに愛でているエクレールさんの熱烈な愛情表現に、さすがのロキも少し引いたらしく、彼女と距離を取った。

「あ、あのエクレールさん。ソフィアはまだ病み上がりなんで、ほどほどに……」

俺の言葉にエクレールさんはシュンとすると、潔くソフィアから離れた。

「そうですね。これからは毎日ソフィアちゃんに会えるのですから。今日のところは我慢するのです」

た、確かにこれからは毎日会えるけど……、毎日ソフィアにこうして抱きつくのかな?

ふとそんな事を思ったら、なぜか俺は複雑な気持ちに襲われたのだった。