そもそも、結婚したいと母に話した時点で両親は賛成だった。


「でね、赤ちゃんがいるんだ、お腹に」


言いづらいできちゃった婚報告なのに、母は明るい声で答える。


「あらっ、今は授かり婚ってのよ。Wハッピー婚とも言うんだって、この前テレビで見たわ」


「相手は会社の上司で部長なんだけど」


「ずいぶん年上?」


「まだ33歳」


「やだ!あんた優良物件捕まえたわねー。ちょっとトロいところがあるから心配してたのに、すごいじゃない~。ちょっと、お父さん聞いて~!」


……こんな調子。

うちの母、ちょっと天然で呑気なんだけど、還暦が近付いて磨きがかかってる。



「部長のご家族は、ホントに挨拶行かなくていいんですか?」


空気が入れ替わったので、窓を閉める。
私は車窓を眺めながら問う。
部長は私の両親への挨拶だけで、入籍すると言うのだ。