「本当にありがとうございました」


車を降りる和泉さんにあらためてお礼する私たち。


和泉さんがにこっと笑った。
少しふくよかな彼女が笑うと、丸い頬にくっきりえくぼが浮かぶ。


「なんだ、並ぶとお似合いじゃん。気付かなかったなぁ」


私は赤面した。
横を見ると、運転席の部長は渋い顔。
でも、その頬が赤いのは隠せないですよー。


その後、部長は私を送り、帰っていった。
引っ越しの準備を先にしとくって。
明日にはマンションの契約を終え、また来てくれるとのこと。


私はというと、その日からポテトとハチミツレモン水を主食に暮らした。
2、3日に1回点滴に通い、水曜日からは短縮勤務で会社に復帰。

吐き気は続いていたし、食事もまだろくに摂れなかったけれど、どうにかこうにか日々をこなす。

やがて、ポテト以外にゼリーやトマトジュースが口に運べるようになった頃、
妊娠3ヶ月が終わろうとしていた。