「驚いたわよ!つわりの時に飲める水分を教えてほしいなんて。聞いたら、ウメちゃんのお腹にいるのは自分の子だとか言い出して」


「和泉さん……すみません。あの時、ちゃんと言えなくて……」


「いいの、いいの。社内恋愛だと言いづらいってもんよ。それより、これ!」


和泉さんが紙袋で手渡してきたのはタッパー。

中身は輪切りのレモンがぎっしり。
何かかかってる。


「ハチミツレモンですか?」


部長が運転しながら、チラ見して言う。


「そう!私の妹も水が飲めないくらいのつわりでね。ハチミツレモンをミネラルウォーターで割ったのだけが喉を通ったの。
作ってきたから、ウメちゃんも試してみて」


和泉さん……
あなたってもしかして、神様?


「ありがとうございます!飲んでみます!」


「和泉さん、助かりました。ネットで調べても、飲める水分ってのがまちまちで。家まで送ります。練馬区でしたよね」


「いいわよ。その辺で下ろしてくれたってバスで帰れるもん。それより、ウメちゃんを長時間連れ出しちゃダメでしょ」


和泉さんはしきりに遠慮したけど、私の体調も保ちそうだったし、休日に出てきてもらって申し訳ないので、おうちまでお送りした。