「あはは、……気が早いなぁ」


「そ、そうだよな!
うん、梅原さえ良ければ、ここにしよう。俺が先に移り住んで、おまえは体調が良くなったら引っ越してこい」


部長は早口で言い、話を打ち切った。
私も何だか恥ずかしいので、助かった……。


「ところで、体調はどうなんだ?」


「良くはないですけど、部長と話してたらちょっと紛れました。ありがとうございます」


「腹で育てるのと産むのは変わってやれないからな。俺にできることは……する。言ってくれ」


部長。
何だか優しいですね。

あの夜感じた、ぐらっと来る引力を感じてしまう。
優しいキスが胸を過る。


「あ!思い出したぞ!」


私の胸の高鳴りを無視して部長が大きな声を出した。
鞄から分厚い本を取り出す。


「これも読んどけ」