「あと、これ見ろ」


部長がクリアファイルをベッドに載せる。
それは新居候補の間取りや写真の資料だ。


「わぁ、ありがとうございます。さすが、仕事が早い」


「当たり前だ、俺を誰だと思っている」


新居はこの土日に二人で見に行くつもりだったんだけど、
私の体調を考えて部長がひとりで探しに行ってくれた。

私たちは何軒分もの資料を、ベッドに並べてチェックを始めた。


「会社が新宿だからな。通勤のしやすさと、住環境の静かさ重視だ。中古マンションだが、築浅ばっかり選んできたぞ」


「あ、こことかいいですね。駅から遠くないし、公園も近くにあるみたい」


「間取りも悪くないよな。2LDK だ。子ども部屋もとれる。あ、でも……」


一色部長は言いよどんで黙った。


「なんですか?」


「なんでもない」


「気になるじゃないスか!」


「いや……子どもが増えたら……このマンションは手狭だなと……思っただけだ」


小声で言う部長。
子どもが増えたら……
私は赤面していた。