私は部長の言葉が終わるやいなや、へなへなと床に座り込んだ。


「おい!梅原!大丈夫か!?」


「あ、はい。なんか力抜けちゃって。すごい目眩」


ここ最近の緊張が一気にほどけたみたい。
目の前がクラクラするし、猛烈に気持ち悪い。
私はなんとか、一色部長につかまって立ち上がる。

部長が言う。


「挨拶が済んだら、タクシーつかまえてやるから帰れ。あと、帰ったら親御さんに連絡しろ」


「はぁ……」


「年内に挨拶に行きたい旨、伝えてくれ。同時平行で新居の準備を進める。
入籍はおまえの親御さんの許可をもらってから、新年に日取りを見てだ。式の準備も親御さんの意向を聞いて、それからとする。
わかったな」


さすが、一色部長。
こんなところでも、段取りすごいッス。
プロポーズもスケジューリングも電光石火なんですけど。

私はコクコクと頷いた。


社長たちがいる居酒屋までの道、
並んで歩いた。
私は胃が気持ち悪くて仕方なく、ろくに喋れなかったけど、
一色部長はしきりに言っていた。


「子どもか、考えてもみなかった」


私もです。

でも、その感慨深い口調は、
もしかして嬉しかったりするんですか?