世の中にこれほど幸福で穏やかな光景があったとは思わなかった。
デートであちこち夜景を見たけれど、そんなのよりずっと綺麗で感動的な光景だ。


「佐波、本当にお疲れ様。ありがとう、ポンを産んでくれて」


「すっっっっごい痛かったですけどね!」


「あんまり役にたてなかったな。……すまん」


「もう!ゼンさんがいてくれたから産めたんですってば!」


私は今まで見せてた醜態を思いだし苦笑い。
部長が私の頭を撫でた。
そして、変な顔をする。


「佐波、おまえ熱いぞ!熱がある!」


慌てて時田さんを呼ぶ部長。
言われてみれば、身体中熱い気はする。
お産で頑張ったせいかと思ってた。


「大丈夫です」


言いながら体温計を渡してくれる時田さん。


「産後はお熱が上がるものです。赤ちゃんの体温を守るためだと言われています」


熱は38度だった。
なるほどね~。